十二月二十日
「(日本大使館建物)内容共完全に保存・・・感服に値すべきか。」
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「内容共全く完全に保存・・・感服の値あり」
「尚聞く所、城内残留内外人は一時多少恐怖の色ありしが、我軍(による)治安漸次落付くと共に漸く安堵し来れり、一時我将兵により少数の奪掠行為(主として家具等なり)、強姦等もありし如く、多少は已むなき実情なれど洵に遺憾なり。」
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「尚聞く所城内残留内外人は一時不少恐怖の情なりしか我軍の漸次落付くと共に漸く安堵し来れり一時我将兵により少数の奪掠行為(主として家具等なり)強姦等もありし如く多少は已むなき実情なり」
この部分は芙蓉版と日記原本では意味が全く異なってくる。
まず芙蓉版では、残留内外人は多少恐怖していたが、日本軍が治安回復に努めた結果安心してきたように読める。ところが日記原本を素直に読むと日本軍が落ち着いてきたので内外人も安心したことになり、恐怖の原因が日本軍にあったことが判る。又、末尾の松井大将の感想は、日記原本の突っ放した感じが、田中氏の「洵に遺憾なり」という書き加えで同情的に変わっている。
この改竄は弁解の余地なしというべきで、素人の筆者が何度眺めても「治安」とか「洵に遺憾」などの文字は見つからない。「多少」と「不少」の読みちがいは止むを得ぬと甘く見ても、編者が自己の主張に合わせて松井日記の記述を反対方向に曲げたことは否定できまい。
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