十一月十五日米側提案
,(十一月十五日来電第一〇九七号)
厳 秘
非公式、予備的且拘束力なし
経済政策に関する合衆国及日本国の共同宣言
一、一般的政策
(一) 合衆国政府及日本国政府はー切の国家に対し貿易上の障壁を軽減し、国際通商関係上一切の差別を除去し且一般に一切の国家が平和的通商手続に依り各国が自国の経済の安全防衛及発達の為め必要とする商品及物資の獲得手段を確保する為め合理的機会を有し得るが如き国際通商及国際投資の条件創設に尽力する様勧告することに付充分協力すべき旨約諾す
(二) 合衆国政府及日本国政府は両国が孰れも前項に於て予見せらるるが如き態様の国際経済関係を創設する為め各々適宜貢献すべき旨約諾す
(三) 前記方針に於ける重要なる措置として合衆国政府及日本国政府は左に指摘せらるる経済関係を両政府相互間に樹立すべく又之を太平洋地域に樹立せんことを翼求すべし
二、合衆国及日本国関係
(一) 合衆国及日本国は出来得る限り速かに両国間の通商的、財政的及其他経済的関係を通常の基準に達する迄之を恢復せしむる様措置することに着手すべき旨約諾す(P438)
(二) 合衆国及日本国は両国間互恵通商協定に関する交渉を目的とする討議を開始すべきことに同意す
(三) 現在の国際非常時中日本国及合衆国は自国の安全及自衛の為め必要とするが如き制約若くは制限を条件として相互に相手国自体の使用に供せらるべき物資の輸出を許可すべきものと了解せらる、両政府は友好国との関係を支配しつつある精紳に依り斯る制約若くは制限を適用すべきものと了解せらる
三、太平洋地域に於ける政策
(一) 支那国の経済、財政及通貨に関する事項に対する完全なる支配権は支那国に恢復せらるべし
(二) 合衆国政府及日本国政府は支那国に於て両国自身、若くは其の国民の為め何等特恵的若くは独占的なる通商上の又は其他の経済的権利を求むるものに非ずして支那国に於て他の如何なる第三国に附与せられ居る待遇に比し不利ならざる通商上の待遇を両国自身の為に確保する為め且本宜言の第一節に述べられたるー般政策の遂行に付全的協力を確保する為め尽力することを約諾す
(三) 合衆国政府及日本国政府は支那国政府に対し、必要に応じては外国の援助に依り、経済開発の広汎なる「プログラム」に着手する様慫慂すべき旨約諾すべく、右経済開発に参画するの充分なる機会は如何なる第三国に対し供与せられ居るよりも不利ならざる諸条件を以て合衆国及日本国に対し供与せらるぺきものとす
(四) 合衆国及日本国が夫々太平洋地域に在る他の諸国に対し樹立せんとする関係は本宜言中に言明せられ居る根本原則によりて支配せらるべく、又合衆国及日本国両政府は之等諸国に対し可能なるときは何時たりとも、経済開発に関する広汎なる「プログラム」に著手することを勧告することに合意す、
斯る「プログラム」参画の機会に付ては外国の援助が必要とせらるる限り如何なる第三国に供与せらるるよりも不利ならざる条件に依り合衆国及日本国に対し充分なる機会が供与せらるべきものとす(了)(P439-P440)
(外務省編纂『日米交渉資料』より) |