中国の報道(1)
中国の報道(1)

(南京事件資料集 中国関係資料編)


「南京事件資料集 2中国関係資料編」より


第1編 解題

(石島紀之)

 第喫圓砲蓮南京事件当時に発行されていた中国の新聞のなかから、南京事件およびそれに関連した記事を収載している。

 これらの記事は、この事件についての第一次的資料でありながら、これまでに系統的に紹介されたことがなかった。最近、発刊された『南京戦史資料集』(偕行社、一九八九年)には、上海で発行されていた英字新聞『チャイナプレス』と『ノースチャイナ・デイリーニューズ』の記事の一部が翻訳・収録されているが、中国紙の記事は収録されていない。

 このように当時の第一次的資料が充分に紹介されてこなかったことは、南京事件否定派に東京裁判による南京事件捏造説を主張させる根拠の一つともなった。しかし本書を読めば明らかなように、当時の中国の新聞はこの事件をきわめて重視し、日本軍の犯罪行為をきびしく糾弾していたのである。

 これらの記事を読むことによって、南京事件が中国でどのように報道されたか、また日本軍の残虐行為は中国人民にどのようにとらえられ、かれらの抗日の意志を固めたかを理解することができよう。

 後によりくわしくみるように、記事の中には南京から脱出した中国人の手記や南京からひそかに送られた手紙が含まれており、資料的にも価値の高いものが少なくない。

 本書に収録した資料の大部分は、『大公報』からとったものであるが、他に『救国時報』と『新華日報』の記事を各一部収録した。

 『大公報』は一九〇二年に天津で創刊された新聞で、南京国民政府成立後は、基本的には国民政府を支持する立場をとりながらも、不偏不党の看板をかかげて、ブルジョアジー・小ブルジョアジー・知識人の支持を受けた。国際問題、とくに対日問題に対して特色ある議論を展開したことでも知られる。

 日本軍の圧迫を避けるために一九三五年末に上海に支社を開設して上海版を発行しはじめ、日中全面戦争勃発後は、漢口で、ついで重慶で発行をつづけた。本書に収録した記事は漢口で発行されていたときのものである。(P6)

 『救国時報』は中国共産党が一九三五年五月から一九三九年十月までパリで発刊していた中国語の新聞で、華僑を主たる読者としていた。『新華日報』は中国共産党が一九三八年一月に漢口で創刊した新聞で、同年十月から一九四七年三月までは重慶で刊行された。国民政府統治区における中共最大の日刊紙であった。(P6-P7)

 『大公報』を中心に南京事件に関する中国紙の特徴をみてみよう。

 まずニュースソースについていえば、当初は『ニューヨーク・タイムズ』・『ノースチャイナ・デイリーニューズ』・『デイリー・テレグラフ』など外国紙やティンパレーら中国在住の外国人からの情報が主であったが、一九三八年一月以降になると、中国人の南京からの脱出者の情報や南京の難民からの手紙が掲載されるようになった。その他、徐州発・南京発の情報もある。

 南京事件に関する報道の経緯をおってみると、十一月末から十二月十三日までの記事は、戦闘の激化、戒厳令の施行、安全区の設置とそこへの市民の移動、市街戦の準備など、陥落前の南京市の緊迫した様子を記している。とくに松井石根中支那方面軍司令官の名で発せられた最後通牒を日本軍による南京市民大虐殺の先触れとみなしている点が興味深い(十二月十一日付)。

 ついで十二月十四日から十六日までは、パナイ号事件が大きく報道されているが、本書では十四日の社説のみを収録した。同じ日、『大公報』は南京の陥落をはじめて認めたが、中国政府の通信社=中央通訳社は南京の大部分の中国軍が安全に撤退したと報じていた(十二月十五日付)。

 南京での日本軍による殺戮・放火・掠奪のニュースが最初に報じられるのは十七日であるが、そのニュースソースが徐州発の中央社電であることは注目されよう。

 さらに二十五日にコ嶺の外国人の情報として南京大虐殺のニュースが大きく報道され、以下、上記のニュースソースにもとづく南京事件の報道が次々と登場することになる。

 『大公報』の紙面をめくって、まず最初に気がつくことは、南京事件を筆頭に日本軍の犯罪行為に関する記事がたいへん多いことである。本書には収録しなかったが、南京以外の各地(華北を含む)での残虐行為を扱った記事もかなりある。

 同紙がこの問題について、「匹夫匹婦のために復讐しよう」(一九三七年十二月二十八日付)、「春節に受難の同胞を想う」(三八年一月三十一日付)、「敵軍の紀律問題の本質について」(三八年二月十一日付)、「『渝京五月記』を読む」(三八年七月二十一日付)の四本の社説(前記のパナイ号事件のものを含めれば五本)を掲載していることをみても、当時、中国で日本軍の犯した戦争犯罪がいかに重大視されていたかが分かるのである。(P7)

 次に『大公報』の記事の内容の中で重要と思われる点をいくつかあげておこう。当然のことながら、日本軍の残虐行為に対する批判はきわめてきびしい。とくに婦女暴行に対する憤りははげしく、中国人がこれによっていかに精神的苦痛を与えられたかを知ることができる。(P7-P8)

 しかしこの批判はけっして感情的な復讐心によるものではなく、「正義人道」の立場からのものである(三七年十二月二十八日付社説)。暴には仁で、残虐には義侠で対し(三八年二月十一日付社説)、南京事件を通じて戦争の残酷さを訴え、戦争の撲滅を主張したものである(三八年七月二十一日付社説)。

 そしてこのような精神的な高見から、『大公報』は南京事件の歴史的意義をすでに次のように述べている。

「これらの暴行は、日本の中華人民に対する侵略史上に暗たんとした血なまぐさい一頁をながくとどめるだろう。」(三七年十二月二十五日付)

「現在の南京の事件は、外国人が伝え、世界が知るところであり、この一点だけでも、日本帝国主義の永久に回復しえない罪状となっている。」(三七年十二月二十八日付社説)

 これらは、今日の目からみても適切な評価であるといえよう。

 あわせて興味深いのは、日本軍の無規律と非人道性についての分析である。『大公報』は、「残酷で殺害を好むこと」が、「高慢な民族主義」をもち「封建的な遺習を踏襲」し、「好戦的で殺害を好む訓練を受けている」「日本軍人の本質」であると述べている。

また近年の「下剋上」、すなわち「野心が充満し、武力を迷信し、侵略を謳歌し、高慢かつ残忍」な中下級軍官に実権が集中していることに日本軍の規律が根本的に失われていることの原因を求めている(一九三八年二月十一日付社説)。

 また強姦が普遍的におこなわれていることについて、『大公報』は、「全世界でもっとも女性を蔑視しているのは日本だからである」という本質的な理由の他に、日本軍が「自らを征服者と思い、中国人を人とみなしていないからである」という民族差別をあげている(同右)。日本の近代史と当時の政治・社会の状況についての正確な理解をふまえた分析といえるだろう。(P8)

 南京事件の犠牲者の数については戦争中という当時の状況下では、当然、さまざまな推測が流され、明確な数字は示されていない。

 殺された市民の数は、十二月二十五日の外国人の最初の情報が五万人と伝え、以後、最低一万人(三八年二月十六日付)から最大八万人(三八年二月二十日付)の数がだされている。強姦された女性の数については、『ノースチャイナ・デイリーニュース』の情報として八千人から二万人の数があげられている(三八年一月二十二日付)。(P8-P9)

 『大公報』の記事の特徴の一つは、南京事件前後の南京市と市民の状況が比較的にくわしく紹介されていることである。陥落前の南京の防衛体制と難民区に移動する市民の姿、陥落後廃墟と化した市街地、日本軍の残虐行為に苦しむ市民たち、難民区の食料と燃料の欠乏、漢口・長沙・宜昌などから大挙して流れこんできた日本人商人、傀儡政権の実態などであり、貴重な史料である。

 なお『大公報』には、「占頷下南京五か月の記録」(「渝京五月記」)・「敵寇萬悪縁」・「南京での敵の蛮行目撃記」(「京敵獣行目撃記」)などの手記や報告が掲載されているが、それらは第曲圓房録してある。

 『救国時報』と『新華日報』は、すでに述べたように中国共産党が発行していた新聞である。中国共産党が南京事件をどのように報道し、認識していたかについては、本書の編者の一人井上久士の「南京事件と中国共産党」(『南京事件を考える』大月書店)を参照されたい。

 『新華日報』に掲載された南京事件の記事も井上論文に紹介されているが、大部分は『大公報』所載の記事と重複している。ここには『救国時報』と『新華日報』の記事のなかで、重複していないものをそれぞれ一つずつ収録した。前者は『ニューヨーク・タイムズ』特派員ダーディンの通信を紹介したものであり、後者は南京から脱出した中国人の見聞を紹介したものである。

 後者では「惨殺された南京の同胞は一〇万を下らない」と記されている。井上は、当時の中国共産党は南京事件を知っており、報道もしたが、「『南京大屠殺』が中国各地の日本軍による数多くの残虐事件のなかでもきわだって突出したできごとであるとの認識は希薄であった」と述べている。

 この点では、南京事件をきわめて重視し、報道し論評した『大公報』とは対照的であった。国民政府寄りの『大公報』と中国共産党とでは、首都南京におこった事件の意味が異なったのであろう。(P9)
                                                  〔石島紀之〕
 



<『大公報』より>

南京の敵軍の放火略奪

民国二十六年十二月十七日

 【中央杜徐州十六日電】」敵軍は南京を占領した後、連日ほしいままに捜索し、気ままに殺戮しており、放火され焼却された城内外の建物はたいへん多い。現在火災はなお止まず、略奪後の残骸はきわめて痛ましい。(P23)
 


 
外人側の情報が確認  敵、南京で大虐殺!
◇難民区内もまた血に満つ


民国二十六年十二月二十五日

◇上海・松江間の大虐殺はとりわけ残酷

 【中央社南昌二十四日電】テン嶺の外人側の情報によれば、敵軍は南京占領後、強姦・略奪などあらゆる悪事を働き、わが国の難民の中の四〇歳以下の男子で惨殺されたものは五万人の多きに達しているといわれる。

 【中央社通信】敵軍が南京でほしいままに虐殺をおこなっているという上海で伝えられた報告は、この間、民間人がえた南京の情報によって確認された。パナイ号が撃沈され、イギリス艦が砲撃されたことも、敵軍が実行した恐怖と虐殺の一幕であることは明らかであり、中国軍民を震憾させるだけでなく、各列強を驚き怪しませるに足るものである。

わが政界人士は、この事件に対しておよそ以下のような感想を述べている。
外人と民間人がえた南京の報告によって、日本の軍人のなかで少壮派が現在すべてを支配し、その長官の訓戒と命令を顧みず、ほしいままにのさばり、恐怖の状態をつくりだしたことは明らかである。これら少壮派は、外国人記者と外交官がすでに南京を離れ、その暴行を目撃する人がいないと考えたので、中国民衆に対してますます迫害をほしいままにしているのである。(P24)
  
 また、南京の難民区も虐殺にあったといわれる。難民区は日本が保護を承諾した土地であり、そのなかの多くは貧苦で頼るところがなく、退出できない非戦闘員であった。〔かれらが〕 ついに災難を免れえなかったことはとりわけ痛憤するところである。(P24-P25)

 少数の外交官と外国人が南京にふたたび帰ったために上述の恐怖状態の情報は外にもれたが、日本軍入城後の残虐行為の経過は中国と外国の信頼できる筋から知りうる。一般の観察によれば、これらの暴行は、日本の中華人民に対する侵略史上に暗たんとした血なまぐさい一頁をながくとどめるであろう。

 また日本軍占頷下のその他の都市の当局の報告によれば、これらの都市もまた均しく同様の虐殺にあった。これらの都市の平民は、日本指導者の非戦闘員を傷つけないという再三の声明にまどわされたために退去しなかったのかもしれない。これらの平民で日本軍の虐殺にあったものは数えきれない。

 別に外国人目撃者が確認したところによれば、上海・松江間の各郷村は日本軍の虐殺にあったが、その状況はもっともむごいものであった。前もって逃れたものをのぞいて、農民で幸いにも難を免れたものはほとんどいない。

 日本政府は、この戦役のなかで、日本は中国人民を敵にするのではなく、中国の現政府を倒し、東亜の平和を樹立するためにたたかっているのだ云々としばしば声明している。

 いやしくも中国の友誼と合作を勝ちとるためには、中国の幾千幾万の罪なき民衆の殺害に頼らねばならないのだ。すなわち全世界は、この国家が中国人民との提携を欲しながら、まずその同胞を虐殺するという道理にもとる行動をとっていることに対して、驚きいぶかしく思うであろう。(P25)



 
アメリカ紙、敵軍の暴行を暴露

民国二十六年十二月二十五日

 ◇ニューヨーク・タイムズ上海特派員の電報、
  アメリカ人士の深刻な印象を引きおこす


【中央社香港二十四日電】外国通信。上海の英字紙上海イブニング・ポストの二十二日ニューヨーク電。

 ニューヨーク・タイムズがこの数日来、掲載している上海特派員アベンド発の数日の電報通信は、驚くべき性質のものである。それによると、中国国内にいる一部分の日本軍は、まったく無紀律で、その種々の暴行は、中国の従来の土匪と比べて勝るとも劣らない。(P25)

 この電報通信は、すでにアメリカの世論とワシントンの官界に深刻な印象を引きおこしている。日本軍の南京における種々の暴行に関して、この通信は、日本軍が入城後ほしいままにおこなった強姦・掠奪は日本国家の国恥であると述べている。(P25-P26)

 アメリカ軍艦パナイ号の撃沈とイギリス軍艦・商船の被爆は橋本〔欣五郎〕大佐が直接に命令したもので、橋本は去年二月二十六日、日本の少壮派軍人が東京でクーデターをおこしたときの指導者の一人である。

 さらにこの特派員は、現在、研究すべき問題が三つあると述べている。すなわち第一に、日本軍の南京での暴行は、日本の軍部の一部分が放任し指嗾したものか否か。第二に、もしそうでなければ、日本の軍隊はコントロールできないものなのか。第三に、日本軍の紀律は、崩壊後なお回復しうるか否か。英米両国軍艦と商船の被爆事件および南京のテロ行為の指嗾者と黙認者が懲罰を受けるか否か。

 この特派員は、橋本大佐の身分についてとくに次のように述べている。

 二・二六事件後、橋本大佐は軍事当局によって罷免され、予備役に編入された。今年の初秋になって日本当局は大軍五十余万を徴兵して中国と戦争し、橋本はまた現役に編入された。

 現在、日本の比較的穏健な軍人と政府筋の人は、このような情勢の下で、もし橋本が処罰されず、少なくとも海軍航空隊司令官三並少将が召換されなければ、各国政府はアメリカ大統領ルーズヴェルトにならって直接日本の天皇に抗議を提出するだろうとふかく憂慮している。

 この他、橋本はある種の特殊な政治力を利用してその地位を強固にしており、このことが日本軍全体にすでに恐るべき影響を生みだしている。すなわち下級の士兵は、上級の軍官が法の外で自由に行動できるのなら、下のものがどうして強姦・掠奪を楽しまないことがあろうかと蠢動しているのである。日本軍が南京に侵入して後、紀律がまったくなくなり、暴行が続出した直接の原因はここにある。

 松井将軍を擁護する穏健派の軍官は、現在軍紀の回復につとめるべきことを切実に理解しており、かれらは日本第三艦隊司令長谷川中将ひきいる海軍がいま極力パナイ号事件の円満解決をはかっていることを承認している。

 しかし陸軍側は、事件後七日たっても(この電報は十二月十九日に発せられた)責任を逃れ、事件を抹殺するほか何も表明していない。

 同日、同紙特派員アベンドは、特電のなかでまた〔次のように〕述べている。

 この間、およそ松井大将および長谷川司令官と知り合いのものは、かれらがひきいる部隊がこのような行為をなしたことをほとんど信じることができない。そもそも正式に南京に入城する前に、松井大将が城内の日本軍の行動を完全に承知していたかどうかもはなはだ疑わしい。

 およそ中国にいる外国人は、日本の友であるか敵であるかを問わず、日本帝国の討幕政策がもし成功することを欲するならば、中国人民にその生活が数年来の軍閥および国民党統治下と比較して良くなったと感じさせなければならないという点で、見解が一致している。(P26)

 この三年来、中国人民に討する蒋委員長の軍隊のあらゆる対処の仕方は、民国以来のどの軍隊よりも良くなった。これに反して、日本軍の南京占領時に当地で発生した残酷な略奪行為は、日本が一種の国恥と認めるべきものである。(P26-P27)

 松井大将の部下は種々の方法を考えて、武装を解除した捕虜や平民・婦女子の虐殺など日本軍の各種の暴行をおおいかくし、松井に知らせないようにしたとのことである。しかし残念ながら悪徳は明らかにされ、松井は、日本軍の一部の下級軍人の秘密の行為をまだ熟知していないとはいえ、疑わざるをえなくなった。

 パナイ号事件だけでも、日本軍が正式に南京を占領した「光栄」を皆無にするにたりるものである。

 かの日本なるものは、個人にせよ民族にせよ、豪快な武士道精神をみずから全世界に誇っていたのである。今、日本の南京での行為によって、この種の声望は完全に地をはらった。

 日本軍の南京での行動を調べると、往時の中国の盗匪が城鎮を占領したときの強姦・殺人・掠奪もこれにおよばない。日本当局も承認し、この種の暴行を取締りたいと述べているが、着手する術がないのである。

 およそこれらは、アメリカ・ドイツの南京にとどまった人士が目撃したものである。十二月十四日、外国の記者が南京を離れて以後、城内の恐怖の情況は想像するにたえない。今月十四日夜から次の日までの城内での日本軍の残虐行為は、文章で形容できないものである。

 二日間の虐殺をへて十六日になると、日本軍当局ははじめて注意を加えるようになった。現在、日本軍はいかなる外国人士も南京におもむくことを欲していないし、長期間、外国人の赴京を許可しないだろう。

 しかしかのすでに南京にいる外国人は、方法を講じてこの種の恐怖の事実を全世界に向けて発表した。この種の事実は次のことを充分に証明した。すなわち日本軍隊はこのたび都市・土地を征服し、中国に首都を放棄させたが、光栄を獲得できなかっただけでなく、かえって日本人民が悔いてもおよばないであろう汚点を歴史にながくとどめることになったのである。

 この記者は、ついで長江の英米軍艦が爆撃された事件について述べている。

 これらの軍艦を爆撃した日本の飛行機の基地は、上海でも日本の航空母艦でもなく、ごく付近の太湖の水面であった。この種の飛行機は陸軍と密接に協力しており、本月十二日早朝、命令を受けたと自称する日本機が蕪潮と南京の二つの都市の間のすべての船隻を爆撃したが、これが後に全世界をゆるがせた事件の由来であると一般にいわれている。

 この新聞記者は、結論として〔次のように〕述べている。(P27)

 日本は元来、極東でみずからを法律による秩序と正義の責任者として任じており、その言葉は行きすぎたところもないではなかったが、その中国における種々の行動は、あるいは了承されていたと見ることができるかもしれない。(P27-P28)

 しかし日本軍が南京を占領し、種々の暴行をおこして以後、名声はがたおちし、従来、日本の大陸政策に賛成していたものも、これを聞いて態度を変えないものはない。南京城内のこの事件の情報が日本本国に伝えられた後は、日本の中国に対する予定の計画も、また重大な影響を受けることを免れない。

 いかなる国の政府がこの後、日本と和することを欲しても、さらに可能性がないだろう。中国の声望のある人士で日本と合作を欲するものも、以後、後ずさりするだろう。それ故、中国の人士で、この後なお日本との合作を欲するものは、ただ恥知らずの徒のみであろう。

 かつ日本が占領した多数の都市からおよそ数百万人の中国人民が続々と避難した。日本の暴行はこれら避難しか中国人民を故郷に帰れなくさせ、これによって、日本軍の恐怖の行動の結果、いたずらに都市を不生産の廃墟とするであろう。(P28)



 
南京の敵の暴行にまた一証拠

民国二十六年十二月二十六日

◇上海ノースチャイナ・デイリーニューズ所載の情況

【上海二十五日午後一時発専電】

〔前略〕ノースチャイナ・デイリーニューズの報道によれば、敵は南京に入って、淫乱・略奪・惨殺をほしいままにし、害毒のかぎりをつくしている。その兵士は将校の前で公然と街路で略奪し、居住民は貧富を問わず、みな御来臨をたまわっている。

 かつ男子を捜索し捕えてすべて銃殺しており、難民区の某号の屋内では四〇人が捕殺された。強姦はいたるところでおこなわれており、ある西洋人の隣家では、少女四人が敵兵によって連れ去られ、ある西洋人は、新しく到着した日本将校の室内に若い婦人八人がいるのを目撃した。


【中央杜新郷二十五日電】

 中国紅十字会第八救護医院の救護隊長陳威伯等四人は、先日、南京を脱出し、津浦路を北上して、二十四日、鄭州をへて武漢に到着した。かれの話では、敵はわが首都を占領して以後、漢奸をそそのかして、市民に一枚二元で通行証を買わせ、かつ市民の腕に日本の二文字を剌青させ、従わないものは惨殺されたとのことである。(P28)
 


社説 匹夫匹婦のために復讎しよう

民国二十六年十二月二十八日

 敵軍が南京を占領した後、難民を虐殺し、婦女を犯しているという報告がたいへん多い。みな外国人が伝えるところである。

 上海の欧米語の新聞はくりかえし報道し、アメリカの新聞の記者は長文の電報を本国に送っている。昨日のドイツの海通社上海電にいたってば、敵軍の司令官もこのことを承認しているが、一般の将校がやったことで、かれは責任を負わないと述べている。

 要するに敵軍が南京で虐殺・強姦・極悪非道をはたらいたことは、すでに確実な事実であり、分からないのは殺害されたもののたしかな数である。最初の報告では、殺された平民は五万人あまりという。

 敵軍は河北・山西の各県で、平民を殺し、婦女を犯したが、報告は詳しくなく、辺鄙な地方のことゆえ正確に調べる方法がない。現在の南京の事件は、外国人が伝え、世界が知るところであり、この一点だけでも日本帝国主義の永久に回復しない罪状となっている。

 南京においてこうなのだから、江南の各地はみな同様である。現在、またわが杭州を攻めおとし、北では済南を攻めているが、およそ敵軍のいたるところすべて南京同様の強姦・惨殺がおこなわれている。およそ人道の観念があるものは、この土匪もおよばない獣行をはたらく敵軍に対して、どのように軽蔑し憤激すべきであろうか!

 南京の難民区は、南京在住の外国人が発起し、敵軍の暗黙の了解をえて成立したものである。もとより事がらはけっして正式なものではないが、人類であるからには、まったく不誠実であるべきではない。

 もともと南京の住民の多数はすでに立ち去り、最後まで南京にとどまったものは、当然、貧民が多かったが、それも難民区を信用したからである。いかんせん占領後になんとこのような残忍、このような凶悪な淫行があろうとは。古代の野蛮民族といえどもこのようではない。

 日本は現代の強国の仮面をつけ、かつ抗日の中国政府に反対しているのであって、中国人民に反対しているのではないと称している。しかし現在、南京だけでなくいたるところでこのような殺戮を受け、善良な女性が汚辱されて、その数は計り知れないのだ。世界文明史の目からみれば、これは真に赤裸々で凶悪な獣行であり、人類のものではないのである。

 私たちはこれら被害を受けた同胞に対して、中国人の立場にもとづいて極度に悲しみ、憤激するだけでなく、人類の一般的立場から大声疾呼して、全世界の正義人道の観念をもつものが立ち上がり、匹夫匹婦のために復讎することを願わざるをえない。

全世界の善良な人々よ! 州と国を問わず、党と職業を問わず、誰もが人道の勇士となって、現代の変装した極悪の日本を糾弾するようお願いする。とくに女性を尊重する西洋人よ、日本軍が南京の各地でどのように善良な婦女を汚辱しているかをみてほしい! 

 新聞紙上では、つねに、千、百の婦女が敵軍の部隊に連れていかれた〔という記事〕をみかける。また最近、ある西洋人は、南京で一人の将校の室に婦女が七、八人監禁されているのをみたと書いている。(P29-P30)

 一般の状況は推して知るべきである。欧米の人士は平素から義侠心をもっているが、この人道上の大侵略者に対して、つまるところどんな感想をもつだろうか?

 私たちが全国の同胞に希望するのも、やはり「匹夫匹婦のために復讎しよう」の一言である。個人の問題では、復讎はもとより偏狭な心理である。しかし民衆のために復讎することは聖賢の遺訓であり、中国の道徳の精華である。

 私たちはこのたび、凶暴な敵によってきわめて残酷・悲惨に蹂躙された。明末のいわゆる揚州十日、嘉定虐殺の悲痛な歴史が現在、日々に演じられているのだ。最近の数日についていえば、浙江・山東は形容しがたいほどの苦難の中にある。

 私たちの政府・各界は、男女同胞がこのような苦難にあっているのを見聞して、どのように志を立て決心し、幾千幾万の匹夫匹婦にかわって復讎すべきであろうか?

 敵は完全にその罪悪を暴露し、その敗北を運命づけた。当然のことながら、私たちはみな全世界の正義人道を主張するものと連合し、努力して敵を殺し、もってこれらの被害者のために恥をそそぐべきである。後方の各界はとくに片時も忘れてはならない。(P30)

 


南京の敵のあらたな暴行

民国二十六年十二月二十八日

 ◇ついにわが負傷兵と医師を殺害
 ◇米教会の病院、強奪にあう

 【中央杜通信】この間、入手した信頼できる消息によれば、敵軍は南京占領後、あろうことか人類の正義と公法に違反し、多数のわが国の負傷兵と医者と看護人を惨殺した。鼓楼病院はアメリカの教会が経営する南京でもっとも歴史のある病院だが、ついに敵軍によって強奪された。国際赤十字委員会は在京の日本軍司令に中国の各負傷兵の病院を保護するよう要求したが、拒絶されたといわれる。(P30)

*「ゆう」注 この情報は確認できない。


ノースチャイナ・デイリーニューズ掲載 南京の敵、なお殺戮をほしいままにす

民国二十七年〔一九三八〕 一月二十二日

◇最近、難にあうもの万をこゆ
◇幼女・老婦人多く汚さる
◇英記者の電報も差し押さえらる。


 【香港二十一日午後九時発専電】上海通信。ノースチャイナ・デイリーニューズは二十一日の社説で、南京の日本軍の軍紀が弛緩し、ほしいままに市民を虐殺していることを非難した。

 最近までに難にあったものはすでに一万人をこえ、一一歳の幼女より五三歳の老婦人まですべて汚され、強姦されたものはおよそ八千から二万人であり、略奪事件は枚挙にたえない。一週間以内になおこれらの事件が発生しているので、一時の現象と責任逃れすることはできないのである。同紙は日本軍の名誉維持に注意するよう日本側に勧告している。

〔中略〕

 【香港二十一日午後九時発専電】上海の消息によれば、マンチェスター・ガーディアン上海駐在記者ティンパレーの二十一日発のニュース電報がまた日本側によって差し押さえられた。

 ティンパレーのこの電報の内容は、ノースチャイナ・デイリーニューズの本日の社説を引用して、敵軍の淫行・略奪を責めたものである。かれがえた南京の消息は同紙の記述が誤りでないことを証明しており、さらに敵軍一七人が一中国女性を輪姦したこと、南京の住宅が略奪されたこと、各国大使館・領事館も同様の運命にあったことを報告している。

 日本の検査員はまずティンパレーに電報を撤回するよう要求し、ティンパレーが拒絶すると、その電報を差し押さえた。ティンパレーは電報のコピーをイギリス総領事館に提出し、以後、ふたたび同様のことがおこらないように厳重に交渉するよう求めた。(P31)



恐怖の中の南京

民国二十七年一月二十三日

 ◇凶暴な敵の放火略奪いまだ止まず
 ◇外国人記者の視察を拒絶


【香港二十二日午後丸特発専電】 上海通信。日本政府当局のスポークスマンは、昨日、外国人記者を招待した席で、南京での日本軍の暴行についてのノースチャイナ・デイリーニューズの論評は、悪意のある誇大な内容であり、実証する術がなく、かつ日本軍の名誉を損なったと非難した。(P31)

 イギリスのマンチェスター・ガーディアンの記者は、日本のスポークスマンと論争し、南京の暴行の情報はみな証明できると述べたが、スポークスマンは答えなかった。外国人記者は南京の状況について引きつづき詳細に報告するよう求めたが、スポークスマンは応じなかった。また外国人記者は、外国人記者を南京に招待し視察させるよう求めたが、またも拒絶された(P31-P32)。

 上海駐在のニューヨーク・タイムズの記者は、郵便物が開封された形跡があるので、日本のスポークスマンに郵便物に対する検査を施行しているか否か質問したところ、日本側もそれを認めた。


【中央社香港二十二日電】南京通信。

 本年一月一日以後の南京の日本軍によるアメリカ国旗侮辱事件は、全部で一五回の多きに及んだ。毎回、アメリカの教会に侵入し、武力をもって中国の少女を連れ去っている。アメリカとドイツの居留民の財産の損失が最大である。日本軍は略奪したうえ、家屋を焼き払っている。イギリス人の財産の損失はなお小さいが、イギリス商の輯安仁公司は略奪され、公司が貯蔵していたすべての酒は飲みつくされてしまった。

 南京が日本軍によって占領されてからすでに三九日がたったが、なお多くの場所で大火が燃え続けており、恐怖の時期はなお過ぎ去っていない。すべての商業地区は廃墟になり、野犬が食物を探しに出歩いているほか、人跡は絶えてない。難民区をのぞくと、全城はすでにもぬけの殷になっているといわれる。(P32)



南京の敵の横暴、禍が外国人に及ぶ

民国二十七年一月二十四日

 ◇アメリカ、日本に抗議を提出
 ◇敵政府に制禦の術なきを認む
 ◇ドイツも同様に抗議を提出


【中央社香港二十三日電】上海通信。

 日本軍が南京で民間のアメリカ人居住者の住宅〔を略奪し〕、あるいはアメリカ国旗を侮辱する等の事件に対し、アメリカ国務省とアメリカ駐日大使は、すでに同時に日本の駐米大使および日本外務省に抗議を提出した。ドイツ政府もまた、日本軍が南京でドイツ人居住者の財産を焼却したために日本政府に抗議を提出したといわれる。

 南京のアメリカ人の住宅は日本軍によってたびたび侵入され、かつ武力で中国の難民の少女多数が連れ去られた。南京城内は、難民区になお二〇万人がいるほか、その他の区域にはまったく人影がない。難民区内の人民は、日本軍の残忍暴逆のために旧居に帰れずにいる。

 難民区内の主宰者は、数人のアメリカ人の伝道士とドイツの商人であり、かれらは共同で国際救済会を組織し、区内の事務を維持してきた。(P32)

 昨日、日本軍当局が外国記者を招待したとき、ある人は、国際救済会が南京に食糧・医薬品を送り、難民を救済することを日本軍がすでに拒絶したか否かについて質問した。日本のスポークスマンは、南京地方維持会が成立して以後、日本側は、国際救済会は存在していないとみなしていると述べた。(P32-P33)

 日本側が公然とこの意思表示をおこなって後、各方面はみな不安を感じ、慈善家たちは難民区内の難民の前途に対しきわめて焦慮している。日本軍部の国際救済会不承認は、慈善事業を顧みないことの意思表示であると各方面は均しく認めているといわれる。


【中央杜ワシントン二十三日合衆(ママ)電】 国務省のスポークスマンは、日本の行政官が南京で日本軍の行動を制禦できないことについて、アメリカ駐日大使グルーがすでに日本外務省に抗議を提出したと最近発表した。

 アメリカの駐華大使秘書官アリソンは、このことに関して、以前、日本軍当局に抗議を提出したが、いまだ効果がない。この間、アメリカ駐華大使館の報告によると、今年一月十五日から十八日までの四日間に、不法の徒が一五回も勝手にアメリカ人所有の家屋に侵入したといわれる。

 アメリカ駐日大使グルーが日本の外務省に抗議して以後、日本の南京大使館は本荘少佐と大使館員一名をアメリカ大使館に派遣し、すべてを説明して、適当な手はずをとり、類似の事件の発生を避けることを保証した。

 国務省は日本側の行動になお焦慮をいだいている。なぜならこれらの行動は、「パナイ号」事件で日本が積極的な保証を提出した後に発生したものだからである。

 日本軍の各地での凶暴な略奪の情報が伝えられて以来、日本政府が戦場の軍隊の行動を制禦できるか否かについて懐疑が発生している。アリソンの報告によると、日本軍は最近、アメリカ人の住宅に避難していた中国人婦女五人を連れ去った。(P33)

 


南京米大使館秘書、日本兵に殴打される

民国二十七年一月二十八日

 ◇難民区の食糧恐慌
 ◇敵軍、購買を許さず

 【中央社上海二十七日ロイター電】 現在、アメリカ大使館の館務を主宰している三等秘書官アリソンは、昨日、日本の歩哨にひどく殴られた。日本当局はすでにこの事件に対して遺憾の意を表明し、アリソン氏は事件の経過をアメリカ国務省に報告した。

 日本側が発表した消息によると、アリソン氏はある中国人の住宅に入ろうとして、日本の歩哨に阻止された。しかしアリソン氏があくまで中に入ろうとすると、その歩哨はアリソン氏を殴り、阻止したという。(P33)


 【中央社上海二十七日ロイター電】 南京城内の安全区管理処は、最近、外界に援助を呼びかけた。それによると、安全区内の二五万の民衆は、区内の当局の食糧購買を日本軍が阻止しているため、均しく食糧・燃料の欠乏を感じている。

 現在、南京には外国籍の医者が二人しかいないので、城中では大いに恐慌を感じている。区内の民衆には、もとの住宅に戻るものがいるが、日本軍の虐待に耐えられず、また区内に逃げ帰ってくるといわれる。(P34)



 
社 説
  春節に受難の同胞を思う


民国二十七年一月三十一日

 今日は春節である。一般人民の気持ちでは年越しである。しかし銃後にいる私たちは少し考えねばならない。敵軍占領下では幾千万人のわが男女同胞が今日どんな境遇にいるのかということを!

 日本の文化はとことんまで破産し、日本の軍閥はとことんまで良心を失い、ここ数か月中国のいたるところ、およそ占領されたすべてのところで殺戮・強姦・掠奪・放火のなかったところはない! なかでも人を驚かすのは、強姦した後さらに殺戮を加え、掠奪の後にさらに火を放つことである。

 北ではこのようだが、南はもっとひどい。今わが長江の南北の名のある都市はすべてこのように蹂躙されている。各地の多くの善良な男女がこのように殺害され、辱められている。暴徒どもがやって来なかった村以外は、すべて焦土と化し、朽ち果て、奴隷化してしまったのだ! 

 我々はどういう言葉を使ってもこの残酷さを形容しつくせない。どのように描写しようともその事実は表しつくせない。

 南京・上海、上海・杭州間の交通はすべて遮断され、ニュースもすべて途絶えた。上海の租界に住む人でも今では南京にいけない。今となっては各地より難を逃れてきた生き残りの人だちと、外国人の口コミに頼るしかない。したがって現在わずかにわかる事実は、万分の一、千分の一にも達していない。

 イギリス人記者ティンパレー氏の報告では、敵軍が京滬線で殺戮した平民は、少なくとも三〇万人、婦女強姦は老女といえども免れなかったという。

 上海のノースチャイナ・デイリーニューズ紙は歴史も長く権威もある新聞だが、近頃の敵軍の蛮行についてはやはりはげしく憤慨している。上海租界西部ではこの類の事件はよく起こっていて、敵軍の無規律さ、非人道ぶりも一般外国人の間ではすでに常識となって、評価も定まっている。(P34)

 良心のかけらもなくしてしまった日本の軍閥は、日本人民に対しては「神聖戦争」であると吹聴し、世界に対しては、中国人民を敵視していないと宣伝している。しかし絶対にたしかな事実は、ここまで徹底した野獣化と狂暴化である。

 我々がもし事実を知っていなければ、これが事実であることを簡単に信じることはできない! その凶悪さ、卑劣さは人間の想像を越えてしまっているのだから。

 我々はこういった事実に対して、憤るだけでなく悲しみをおぼえる。悲しいのは、日本が過去に二千年の孔孟文化の薫陶を受け、近代においてはまた七〇年の西洋文化の訓練を受けたにもかかわらず、軍隊がこのような獣行・非行をおこなうことである。

 しかもいわゆる政治家・外交家・経済人・文化人・ジャーナリストはただ征服を吹聴し、戦争を謳歌するだけで、黄色人種の面目を潰してしまい、アジアの文化を汚すこのような軍隊の行動に間しては、なんと良心を偽って一言も述べないのである。

 先月十五日の日本政府の声明は、中国の独立の否認を公然と宣告し、あからさまに中国を征服し、その植民地にしようとするものであり、そのやりかたはまさに、凶悪・非人道的・野蛮・無規律な軍事占領を続け拡大していくというものである。

そ の目的は、全中国のすべての都市、すべての村を現在の江南・河北のようにしようとし、彼らの野獣化した軍隊に、いたるところでこのような殺戮・強姦・掠奪・放火を続けさせ、その征服欲・殺人欲を放任させようとすることである。しかもロではこれが東亜の安定だとか、「新中国」との提携だとか言っているのである。

 我々は今日、全国の銃後の男女同胞に対する春節の贈り物として、この悲惨な事実を述べた。我々は絶対に良心に基づいて語っており、もしも事実でなければ、たとえ敵であってもあらぬことを捏造して中傷するようなことは絶対にしない。遂に知りつくせず、言いつくせないことを悔やむだけである。

 我々は全国銃後の同胞が必死の覚悟をもつことを願っている。もし国家の独立を保てなければ、民族は消滅するかさもなければ、永遠に奴隷となるかだ。我々はかならず誓いを立てなければならない。力をふりしぼり、一切の責任を負い、わが数千万同胞を救い出すと。同時にこれは自分を救うことであり、自分の家族・子どもたちを救うことである。

 我々はまた、全世界の善良な人々がこの凶悪な征服戦争に注意し、一緒に人道のため文明のために正義の制裁を発動することを願う。さらに、日本国内の善良な人々が自分たちの軍閥の行動に対してどう感じるか、恥ずかしくないかどうか、自ら良心に問うことを願う。(P35)

 受難を受けたわが同胞たちの境遇はきわめて悲惨である。しかし戦局のうえから言えば、これは必ず天が敵の命を奪うことである。なぜなら一つの民族が良心を失えば必ず滅びるからである。(P35-P36)

 日本は今武器以外に何かあるだろうか? 東亜を安定させる力であると自称する敵軍は、これほど軍紀を乱し、人道をなくして、どうやって戦争を持ちこたえることができるだろうか? 敵兵たちは人間の理性を失い、巾着を満たし、剥き出しになって現れてきたのは現代風に武装した倭寇である。このようにして大中国を征服できるのか? このようにして白色人種を追い出すことができるのか?

 大亜細亜主義の松井〔石根〕は胸に手をあて自ら問うてみよ。焼き、犯し、奪うことが主義なのか? このようにしてアジアを統治できるのか?

 中国が独立擁護のために戦うというのは、元来、天地の大義であり、挫折しても屈せず、勇気を振るい起こしてやりとげるのである。ましてや今充分に証明されているとおり、国権がいったん失われれば、すべての人民の生命・財産・貞操は徹底的に蹂躙されるのだ。

 同時に証明されたのは、いわゆる一等強国であるはずの日本の軍隊は、本当はこれまでに徹底した非人道的で無規律であり、思いのほかに悪劣であったということだ。これにより我々全国民は、抗敵救亡が唯一の道であることをさらに自覚すべきであり、また、敵の精神上の破産を見ぬくことができるのである。

 この新春に当たり、我々みんなは受難にあった同胞のために悲しみ、同時に抗戦の前途のために祝うのである。みんな涙をこらえて腹を据え、めいめいが職責を果たし、もって国を救い、同胞を救い、自分を救い、暴虐な敵を駆逐する目的をあくまで達成するのだ!(P36)



 
南京なお不安

民国二十七年二月二日

 ◇敵、安全区の民衆に帰宅を迫る

 【中央社上海一日海通電】 南京からアメリカ船ビー号に乗船して上海に帰ってきたある国際救済委員会委員の話によると、南京の秩序は今なお不安な状態にある。日本当局は極力原状の回復につくしたと称しているが、今にいたるまで、南京の状況は原状の回復になおほどとおい。日本軍はその長官の取締りを受けないようであり、事件が多数発生している。

 安全区内にいる中国人民は現在二〇万人であるが、先日、日本軍はかれらに最後通牒を送り、かれらが今週中に安全区を離れ、帰宅しなければ、区内の店舗はすべて閉鎖し、区内での食糧の販売を禁止すると述べた。人民は安全区から帰宅して日本軍の蹂躙に任せることを望んでいないので、これに対し均しく不安を表明している。(P36)

 


敵軍、獣行をみずから供述

民国二十七年二月九日

 ◇松井、軍紀の維持を指示
 ◇南京の居住区、一部開放さる


 【中央社上海八日ロイター電】 日本軍は、昨日、南京のある広場で殉難士兵の追悼会を挙行し、松井が訓話して各長官に紀律の厳守を指示したといわれる。松井がこのたび演説したのは、明らかに日本軍の暴行について引きつづき外界に報告され、かつきびしく批判されているからである。

 この間、人士は評論を加え、松井のこの行動は日本歴史上空前のことであると認めた。松井の演説の中で、このたびの中日戦争に対する日本軍の決心を詳述し、全兵士・長官が軍紀につとめ、世間の謡言を鎮静させるようにと述べた。列席して訓示を聞いた各級の長官の中には、皇族で現在南京の日本軍司令官朝彦〔朝香官鳩彦〕親王がいる。

 日本大使館のスポークスマンの発表によると、南京ではすでに一〇万人の市民が難民区から「南京自治委員会」が規定した二つの区内に帰って居住している(「自治委員会」は最近、南京を五区に分けた)。

 一月十六日から二月四日までに一万一一五戸、五万四四六人が次々に第一区内に帰って居住し、一月十三日から二月四日までに一万二七九六戸、四万五七四六人が第二区内に帰って居住している。

 現在、難民区にとどまっているものは約一五万人であり、そのうちの一部分は、居留するところがないので難民区内にとどまっているのである。南京の第三、四、五の三区は、現在まだ開放されていない。(P37)
 


社説 敵軍の規律問題の本質について

民国二十七年二月十一日

(略)

丙・・・このために世界の世論をあまねく喚起することがさらに必要である。全世界の善良な人々に日本軍閥の本質がこのように高慢で凶悪残忍であり、この害をのぞかなければ、今日禍を受ける者は中国だが、他日禍を受ける者は白人であることを知らしめなければならない。(P39-P40)

 このたびの南京などでの殺戮・強姦は、人類の歴史の恥ずべく悲しむべき一頁である。日本軍閥の本質は、本来、無限の侵略であり、その侵略の手段はこのような淫行・殺害・放火・略奪である。

 全世界の白人および一般の有色人種は、これが人類の共同の大敵であることを認定し、ただちに全世界の精神を動員し、公論の権威をもって日本の善良な人民を目ざめさせ、残虐な軍閥をして制裁を受けさせねばならない。


 明日、ロンドンでは世界反侵略大会が開かれようとしているが、私たちはとくにこの点に注意するよう希望するものである。(P40)



敵軍の信義地を払い、南京難民区を蹂躙

民国二十七年二月十三日

◇無辜の人たちに対する強姦・略奪、そして虐殺
◇馬市長、国際委員会に書簡を手渡し 敵に対しきびしく交渉し制止するよう要請


【中央杜電】敵軍は南京でわが人民を蹂躙し、そのありさまは悲惨を極め、国際委員会が敵と相談して難民区を仕切るなど各種の方法を取り決めたが、完全にこれに違反した。敵のそういった類の暴行には人道がまったく失われている。

 このため南京市長馬超俊は国際委員会首席ラーベ、総幹事フイッチの両氏に書簡を送り、日本側とは厳重な態度で交渉するよう伝えた。原文は下記のごとし。

 南京難民区国際委員会首席ラーベ先生、総幹事フイッチ先生および委員各先生御中・・・

 前略。昨年十一月下旬、日本軍が南京を脅かした際、南京に御滞在中である友邦人士の方から、人道的立場より難民区設立提唱の御教示を賜りました。

 市政府より本国最高長官の同意を伺い、さらに貴会も日本側当局と電報による相談を幾度か重ねられ、十二月一日において、日本側当局が上海のジャキノ神父に託した返答電報にもとづき、最後の決定をなされました。

 この電報では、当区内で軍事上必要と思われることがなければ、日本側も、つとめて当指定区域を尊重することをはっきりと同意しております。これにより南京市難民区は、貴会の熱心な組織のお陰でようやく実現されることになりました。(P40)

 さて、ところがよく知られているように、 日本軍は南京占領後、しかも難民区内において、非武装の民衆を二万人も虐殺し、兵隊は人を殺した数を競い、さらに一一歳から六〇歳までの婦女を強姦しました。(P40-P41)

 今年の一月二十六日、アメリカ大使館秘書アリソン氏が日本側に殴打されるという事件も起きました。これは金陵大学農具売り場の中国人女性が日本軍に三回も強姦されるという事件に端を発しており、日本側はその慎重な承諾の言葉とはうらはらに、国際上の信義を踏みにじったということであります。

 狂暴で残虐な獣のような欲望をほしいままにすることしかしらず、人間としての情もありません。史上例のない暴行であるだけでなく、文明国家としてはこのうえない恥であります。

近 頃さらに間いたところでは、難民区内二〇万人の主食、野菜および薬品は皆つきたため、貴会が各方面に救済輸送を呼びかけられましたところ、日本側はこれを認めないとして拒絶し、ただちに我が二〇万人の無辜の難民を餓死の狭間に陥れようとしたそうで、これを聞くに悲しみのあまり憤慨に堪えません。

 ここに貴会に対し心からの書をしたため、日本側とは昨年十一月一日上海のジャキノ神父に託した返答電報に基づき厳しい態度で交渉に臨まれることをお願いし、区内の食料等の救済が得られるよう働きかけて多数難民たちの残りの命をつないでいただき、そして貴会の神聖なる使命を全うされますことを、心から願ってやみません。

南京市市長馬超俊、敬具。(P41)







(2009.6.12) 


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