国際連盟 理事会第100会期 議事録


「南京の実相 国際連盟は「南京2万人虐殺」すら認めなかった」より



本稿は、「「南京の実相」を読む(1) 「2万人すら認めなかった」というトリック」の資料コンテンツです。

言うまでもありませんが、「国際連盟は「南京2万人虐殺」すら認めなかった」という事実は存在しない」ということを説明する目的で、この議事録を紹介しています。




「国際連盟理事会第100回会期議事録」

第6回会合 (非公開会議、ついで公開会議)
1938年2月2日水曜日正午開催
議長:M.Adle


出席した理事会のメンバーは下記の通りである。

ベルギー:M.Bourquin
ボリビア:M.costa du Rels
グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国:Viscount Cranborne
中華民国:M.Wellington Koo
エクアドル:M.Qurvedo
フランス:M.de Tessan
イラン:M.adle
イタリア:―
ラトビア:M.Feldmans
ニュージーランド:Mr.Jordan
ペルー:M.Garcia Calderon
ポーランド:M.Komarnicki
ルーマニア:M.crutzesco
スウェーデン:M.Unden
ソビエト社会主義共和国連邦:M.Stein
事務総長:M.J.Avenol

(P83)


[4013]

 中華民国政府によるアピール:議事運営手続きの問題


議長 理事会には中華民国政府のアピールに関する決議案が上程されており、理事会はそれについて公開会議で決定を行うことが求められています (注1:決議の草案文面についてはページ4参照)。議事手続きについて何か意見がありますか?

M.Quevedo(エクアドル) この決議について投票する際に、私がその意味をどのように解釈するか簡単に述べることを提案します。

*発言者の国名は原文になし。「ゆう」が追加。

M.Komarnicki(ポーランド) 私は決議案の投票を棄権すること、その際に棄権の理由を説明することを提案しなければなりません。

M.Garcia Calderon(ペルー) 私もまた、私の投票について公開で説明することを提案します。

M.de Tessan(フランス) 私は、この問題についての発言権を確保される方々の言われることを聞いて、簡潔に話す権利を保留します。

Vicount Cranborne(イギリス) 議事手続きの問題が提起されるのであれば、私も一言申し述べたいことがあります。(P83)

M.Komarnicki(ポーランド) 議事手続きがどうあるべきかについて、私が理解していることを明確にしたいと思います。 決議案は最初に理事会に提出され、その決議の作成者がそれを公開の会議で説明することになると推察します。それから理事会がそれを票決にかけ、各委員は、投票の際に、自分の意見を説明できることになります。 私の発言することはすべて、その決議案に関係するものだと申し述べておきたいと思います。(P83-P84)

M.Wellington Koo(中華民国) 議事手続きの問題はもちろん中華民国代表の見地からとても大事です。ただし当然のことですが、私自身に関する限り、私に関心があるのは中華民国のアピールの実質ということです。

私は提案します、つまり、ほとんど申し述べたことですが、私は理事会に、この議事手続きの問題は公開の会議ではなく非公開の場で話し合うよう御願いします。

議事手続きの問題について意見のある理事会メンバーの見解は皆喜んで拝聴することは確かです。そうすれば、その間題は公開の会議前に処理することが可能になるでしょう。

M.Komarnicki(ポーランド) 公開の会議で為される意見陳述の主題が何であるかを明確にすることが肝心だと思います。私自らの発言は決議自体に関することです。 私は、決議案が投票にかけられる際にその発言をすることを提案します。

Vicount Cranborne(イギリス) 議事手続きの問題は非公開セッションで議論するという中華民国代表の提案に賛成します。 それは理事会メンバーに関する問題であり、したがって非公開セッションで扱われることが適切です。理事会メンバーが提起したいどのような点についても議論が尽くされることを歓迎します。

M.Garcia Calderon(ペルー) 全世界の報道陣がこの間題に寄せている注目度のことを考えた場合、議事手続きの問題は公開セッションで議論されるべきだと思います。

事務総長 採択されている手続きについて、理事会の諸メンバーからどんな批判も私は聞いていません。 しかし、この手続き事項について多少の意見が報道されているので、いずれにしてもこの間題の一つの面を詳らかにするために簡単に発言したいと思います。

 どうして報告者が選任されなかったのかが問われています。この点については私がきわめて簡単にお答えできると思います。

 中華民国政府のアピールは、理事会の前回のセッションの議題にも取り上げられた通りに、今回のセッションの議題にも第24項目として含まれています。 それは、1937年9月に中華民国代表によって行われた声明によってここに取り上げられています。その声明の際に、同国代表は極東諮問委員会にこの間題を委託することに同意されました。 (注1:連盟公報1937年12月、906頁参照) 

それから、同代表は、この同意が、理事会がこの問題に関心を持ち続けることを条件とするものであることを明言されました。 つまり、この問題が議事日程に引続いて含められることを条件とするとされたのです。そういうわけで、この問題は議題に取り上げられ、それを理事会はセッション冒頭に承認したのです。(P84)

 現セッションではどんな決定もなされていないし、また中華民国代表からも他のどの国の代表からも、この問題について討議を開始しようという提案もありません。 そして、理事会は提起された問題の範囲が明示されない限り、議題に挙げられているだけでは、またこのテーマについてのステートメント(声明書)があるだけでは、報告者を任命することは出来ません。 ですから、報告者が任命されなかった理由は非常にはっきりしていると思われます。(P84-P85)

 中華民国代表を含む理事会の諸メンバーによって起草された提案の知らせを、私は数日前に受けました。それを理事会のメンバーに配布することで、私は自分の明白な職務を果たしているものと考えます。

 理事会メンバーの一人または複数によって提出された決議案を理事会に配布するようにとの要求を拒絶することは問題外だと思います。 今回の場合、諸メンバーがこの問題を検討して必要であれば(本国の)指示を仰ぐ期間をできるだけ長くとれるようにするために、そうした配布をできるだけ速やかに行うよう注意しました。

M.de Tessan(フランス) 事務総長の発言はまったく当を得たものと考えます。この発言で当理事会メンバーの心中に生じたかもしれないいかなる誤解も氷解できたはずです。 議事手続きの問題が審議されるのであれば、M.Wellington Kooが提案されCranberne卿が支持された、一切の誤解を終わらせる方法としての提案に私は賛成します。議事手続きの問題についてまだご発言がありますか?

M.Quevedo(エクアドル) 報道されているステートメントについて、理事会のどのメンバーもそれに賛成していないと私は思います。 私が提案する宣言は、決議案起草の際に従った手続きにはいずれにしても言及していません。それはただ、わが国の政府が決議に付している解釈に関係するものです。 議事手続きの問題を議論することが望まれるならば、いつでもそれに応じます。しかし、昨日午前の意見交換は多くの問題点を解決するうえで大いに役だったと思いました。

M.Stein(ソ連) 理事会が進めた手続きについての事務総長の考えにまったく賛成です。

M.Garcia Calderon(ペルー) 私たちが今関わっている問題は、それ自体、非常に重要です。世論が喚起されています。私自身としては、英国とフランスの代表が行われた説明に大いに感謝しています。

しかし、決議起草の詳細を知らされていないことを考慮すれば、また起草が行われた議論に私たちが参加しなかったことを考慮すれば、それについて意見を形成することは私たちにとって不可能です。 したがって、公開セッションで私の棄権の理由を述べたいと思います。そうしないと、不可解な棄権となるでしょうから。

もし求められるのであれば、私の提案する宣言を直ちに読み上げることができます。それはまったく当たり障りのないもので、何が起きたのかということと、英国およびフランスの代表による説明への感謝を表すものです。(P85)

M.Costa du Rels(ボリビア) 事務総長のご発言は非常に的を射たものと思います。 事務総長は決議案を理事会に配布して、諸メンバーがそれを検討する合理的な時間の余裕を得るようにする義務がありました。 決議案が、中華民国代表の協力を得て、理事会のあるメンバーたちによって起草されなければならなかったことも完全に理解できます。 すべてのことはまったく道理にかなっているように私には思えます。(P85-P86)

しかし、議事手続きをさらに理に適ったものとするため、決議案の冒頭に「・・・の代表たちによって提出された決議案」の文言を置くことは可能ではないのだろうかと思います。 その文言は決議案の起草に関わらなかった理事会メンバーたちの困難に対応するもののように私には考えられます。

M.stein(ソ連) 私は理事会メンバーが公開セッションで声明を発する権利を奪うようなどんな提案もするつもりはありません。 しかし、政治的根拠による棄権が私にはよく理解できますが、議事手続きを根拠とし、その理由による棄権は理解できないと言わざるを得ません。

理事会が報告者を任命していたと仮定しましょう。報告者は決議案を提出することになったでしょうし、合理的な時間をおいて、それは理事会の会議で審議されなければならないはずです。

しかし、理事会は昨日から決議案をすでに手にしていたのです。だからすべてのメンバーがその文言を検討し、それぞれの意見を提出する時間がありました。 この時間の余裕は、エクアドル代表が、ジュネーブと同国の距離にもかかわらず、本国政府と交信してその指示を受けることを可能にするに十分でした。そこで、私の考えでは手続きは完全に十分なものでした。

同時に、私に関する限り、理事会メンバーが決議案についてそれぞれの見解を述べる機会を与えられることに反対するものではありません。

M.Garcia Calderon(ペルー) 昨日の会議で、決議案の詳細のうちいくつかの点が注目され、それについて私たちは合意に至りませんでした。

眼前にあるテキストは長くて複雑な性質の前回議論の成果ですが、それにすべての理事会メンバーが参加したのではありません。 したがって私もこの審議と長々しい起草過程に日ごとに出席したわけではありませんから、本当に投票の拠るべきところが見いだせません。

したがって私は投票では棄権します。しかし、ソ連代表のご見解にもかかわらず棄権するということの理由を説明しなければなりません。

 私は、政府の指示を求めることが必要であるとは思っていません。ただ、この文言に責任ある人々の間で行われた審議に日ごとに出席していないで問題についてのほぼ完全な見解を形成することができないと申し上げるだけです。

理事会は予備草案を検討するために数日前に会合することも出来たはずですが、そうではなくて、私たちは間際になっていくつかの点で暖味な、またいくつかの点でそれに内在する不明瞭さの故に気がかりなところが残る草案を与えられました。

昨日、私たちが文言のすべての明細については合意に達しなかったことを、理事会は知っています。それらの理由から、遺憾ながら私はこうした態度を取らなければなりません。(P86)

Mr.Jordan(ニュージーランド) 私には誰が決議案を起草したのかを表記する理由が分かりません。誰が起草したかが、問題にどう関係するのでしょうか。肝心なのは、誰が特定の提案をするかではなく、どんなことが提案されているのかという点です。(P86-P87)

 現在の提案について言えば、最初の5段落については議論することはほとんどありません。 これらの段落は「国際連盟の諸加盟国が上記の決議の条件に最も真剣な注意を払う」よう求めています。国際連盟加盟国が1937年10月6日に起きたことを忘れてしまっている場合には、これはそれを思い出させることになります。もし加盟国が忘れていない場合には、それで大変結構です。

 決議の最後の部分が肝要なところですが、義務の生じない条件です。別に拘束する文言はありません。ある国々があることをすると理事会は信頼しているというだけです。そうするのだとは言っていません。理事会は、ある国々がそうすることを信じているというだけです。

そうした国々は「ほかの同じ関心を抱く勢力と協議して、極東における戦闘の正しい解決に貢献できるさらに進んだ措置の可能性を速やかに検討する」と述べています。もしここに居るならば、日本の代表もそれには同意することができるでしょう。

問題は、「極東における戦闘の正しい解決」ということが何を意味するのかという点です。そして、それが、私たちの間で意見が割れていることです。

 要するに、決議は慎重に練られた文書であり、それに私たちはどんな意味も持たせることができます。ですから、それについて長く議論する必要はないと思われます。私は、中華民国がこの草案の通過を黙認されていることに感銘を受けています。それは私の決定に影響するものです。

ですから、これを公開セッションで通過させて世界に明らかにしてはならない理由が私には見あたりません。私たちが望むのは宣伝効果ということであれば、皆自由に発言することができます。

M.Komarnicki(ポーランド) Mr.Jordanの発言に全く賛成です。私にはこの議論の要点がまったく理解できません。議題となっていた事項は「会議議題の採択」で、私たちはそれを採択しました。通常の議事手続きに何らかの変更を提案された方はいません。ですから理事会のどのメンバーも公開セッションで投票について説明する権利があります。

私たちは手続きの問題をやや長々と論じています。問題がきわめて複雑であることは明らかです。この決議の起草をもたらした交渉に5日かかったのですから。

しかし、思うにそのことは比較的些細なことです。そして、私たちが公開セッションに移行することを妨げる事項は何もありません。公開セッションで私たちのそれぞれが各自の考えを説明することができます。(P87)

M.Costa du Rels(ボリビア) 論じられている問題は議事手続きの問題です。そして私は敢えて手続きについての提案をしました。報告者はだれも任命されていないのですから、決議案はこれこれの国々の代表により提出されたと言明して、このテキストから匿名性を排することが可能でしょう。そのことにより、決議案の練り上げに加わらない諸国は、自ら望む見解をまったく自由に提出することができます。(P87-P88)

M.Wellington Koo(中華民国) 私は決議案の作成者の名を言及する必要性を認めません。決議を報告者が説明するのでもないかぎり、理事会がそうすることは通常の慣行にありません。

 いずれにしても、私は決議の作成者の一人として引用される名誉に値しません。決議は意見の交換の結果で、理事会による決定の基礎としてできあがるものです。私は討議に参加しました。

すでに述べたように、私はそれに付帯宣言を追加できれば、決議を受け入れることができます。しかし、それはわが国政府が理事会に採択していただきたいと望むことを著しく欠いています。

中国を決議の 「作成者」 の一員として含めることは、中国がこの決議に賛成する諸国のひとつであり、それに満足し、現在の文言を主張しているとの印象を与えかねません。それではまったく誤った印象となります。


Viscount Cranborne(イギリス) 私もまったく同意見です。中国の代表はきわめて難しい立場にあります。決議の作成者のひとつとして中国に言及するように中国代表に求めるのは、公正を欠きます。 これまでの発言を見ますと、ボリビアの代表は自分の提案をあくまで押すことにはならないでしょう。

M.Costa du Rels(ボリビア) 私は、これ以上の困難なく決議案の採択を今日可能とするため、私の提案を撤回します。

(以後、理事会は公開セッションに)

(P88)
 


[4014]

 中国政府による訴え


議長 本議題に関して作成した決議案の文言は、次のとおりです。(文書C69.1935.察

「本理事会は、
「極東における情勢を考慮し、
遺憾ながら、中国における敵対行為は継続し、本理事会の前回会合のときよりも激化したと認め、
「政治的また経済的復興期にある中華民国政府の努力と成果にかんがみればこの状況悪化をいっそう残念と認め、
「総会は、1937年10月6日付け決議により、中国に対する道徳的支援を表明し、国際連盟加盟国が中国の抵抗力を弱体化し、またそれにより現在の紛争にあってその困難を増幅する効果をもついかなる行動を慎み、 またどのようにして諸国が個別に中国に支援を提供できるかを検討すべきであることを勧告したことを想起し、
(P88)
「上記決議の文言に対してもっとも深甚な注意を払うことを国際連盟加盟国に求め、
この状況に特別の関心を有する理事会に出席する諸国が、他の同様の関心をもつ諸国と協議して、 極東における紛争の公正な解決に寄与するさらなる措置の可能性を調査する機会を失わないと信ずる

M.Wellington Koo(中華民国) 議長、私が皆様の前で決議案についての中国政府の見解を表明する前に、国際連盟理事会がこの状況にあってなしうること、また私どもがぜひ希望することに関して、 ここ数か月間に発生した変化の状況を私が皆様に説明することをお認めいただけると私は信じます。

 第18回総会が日本軍の対中侵入に関する中国政府の訴えについての昨年10月6日の決議を採択して以来、日本は中国領土の乱暴極まりない侵略を継続し、強化しています。

 日本軍は中国北部においてそれ以来黄河を渡り、孔子の生誕地である聖なる山東省の首府である済南を占領しました。 中国中部では、中国軍は、日本の陸海軍および航空隊のきわめて恐ろしい襲撃に約3か月勇敢に抵抗した後、上海地区から1937年11月に撤退せざるを得ませんでした。 南京もそのように脅かされ、中国政府は沿岸から1、000マイルも離れた重慶に遷都することを迫られました。

 昨年12月における杭州と南京に対する日本軍の執拗な攻撃は、これら2つの重要な都市と揚子江デルタのもっとも豊かで人口稠密な地域の占領という事態に立ち至りました。

 日本海軍は福建省および広東省の沿岸にある数多くの中国領諸島を占領し、広東および中国南部の侵略を繰り返し試みています。

 日本軍航空隊は、世界各国一致の非難を無視して無防備都市の無差別爆撃を継続し、中国市民の大量虐殺を行ってきます。 17州を下回らない人口稠密地帯に広範囲にわたる継続的な空襲が行われました。それは西北部の内陸にある甘粛省にも、南東部にある広西省にも及び、大量の死者を出しました。しかもその大部分は婦女子です。

 また、軍規厳正を常に誇りとしていた日本軍が占領した地域での残虐かつ野蛮な行為は戟争に巻き込まれた人々の苦しみと困難を増幅し、良識と人間性の感覚に衝撃を与えました。

その多くの例が中立的な目撃者によって報道され、外国の新聞に公表されていますので、その証拠をここで示す必要もほとんどありません。説明としては、ニューヨークタイムズ紙の特派員の描写を引用すれば十分でしょう。

これは日本軍が南京を占領下の同市でおきた恐怖の光景で、1937年12月20日にロンドンのタイムズ紙に報道されたものです。記者は言葉少なくこう述べています。

「大略奪、婦女暴行、市民虐殺、住居強制立ち退き、捕虜の大量処刑、頑健者には焼印」(P89)

*「ゆう」注 これはダーディン記事の転載だと思われるが、「頑健者には焼印」は明らかな誤訳。

 日本軍が南京と杭州で犯した残虐行為につき、アメリカの大学教授や宣教師たちの報告に基づいた信頼のおける記事がもうひとつ、 1938年1月28日付けのデイリーテレグラフ紙とモーニングポスト紙にも掲載されています。(P89-=90)

日本軍が南京で虐殺した中国市民の数は20、000人と推定され、また若い娘を含む何千という女性が凌辱されました。 南京大学緊急事態委員会のアメリカ人議長が、1937年12月14日に日本大使館にあてた書状には、 「われわれは、日本帝国陸軍および大日本帝国の名声のために、貴国の妻、娘、姉妹のために、南京の家族を日本の若い兵士の暴行から守るように促す」とも書いてあります。 特派員は、「この訴えにもかかわらず、残虐行為が制止されることもなく続いている」と報じています。 (「ゆう」注 この書状は「南京事件資料集 1アメリカ関係資料編」P135以下に掲載されている)

 占領地域全体にわたり、日本軍は、領土的野心はないと宣言しながらも、あらかじめ構想していた計画をどこでも実施に遷し、自ら選んだ傀儡をもって多くの地域権力体制を打ち立てています。

その頂点が北京での1937年12月14日におけるいわゆる「中華民国臨時政府」の樹立です。同政権樹立の関連では、中支派遣軍総司令官寺内陸軍大将が日本軍の命令に従うように中国人に命令した12月17日の宣言があります。

日本帝国政府の1938年1月16日付の、中華民国政府をもはや相手にせず、中国の新体制と協力していわゆる「再生された支那」を建設する責任を引き受けるとした声明もまた衝撃的でした。 中国の独立と主権を侵害する日本の邪悪な意図をこれ以上直接的に示す証拠はありません。

 日本軍の侵略は中国人の生命および財産に驚くべき損失をもたらした上、中国における諸外国および外国人の正当な権利および利益を毀損しました。 そのため、1937年11月15日に行われたブリュッセル会議の宣言には次のような箇所があります。

「日中両国間の現在の敵対行為がすべての国の権利を損なうのみならず、ほぼすべての国の利益を損なっていることは否定できない。 これらの敵対行為は、第三国の国民の一部に死を、ほぼすべての国の重要な権益には大きな危険を、第三国の国民の財産には広範な破壊を、国際通信には中断を、国際貿易には混乱と損失を、 すべての国の国民には恐怖と憤りの念を、全世界には不安と恐れの感情をもたらす」

 このステートメントが出て以来、日本の陸海軍および航空隊による第三国の外国公館、民間人および公共の資産に対するいわれのない意図的な襲撃から、深刻な事態が発生しました。 アメリカの砲艦パネイの撃沈、英国の砲艦レディバードおよびその他いくつかの英米両国の船舶への砲撃、駐南京米国大使館館員への襲撃、それにいくつかの欧米諸国の国旗に対する侮辱などが挙げられます。(P90)

 これらの事件の発生は、「暴行、謝罪また暴行」という日本の政策に見られる欧米諸国への軽視の象徴であるばかりでなく、極東における欧米諸国の重要な権益の存在そのものを巻き込んだ重大な問題であります。 これは、「中立国の権利および利益の尊重」を保障するという日本の宣言の重要性に対して世界の眼を荒々しくかつ苦悩をもって聞かせることになりました。(P90-P91)

 ひとつ事例を挙げますと、周辺地域の日本軍による占領の結果、極東における中外合弁企業の誇りでもあり、世界でも最大の商業都市のひとつである上海は、日本の支配下に置かれ、その将来そのものが生死のはざまにあります。

日本軍による上海港の中国港湾税関に対する干渉、信書および電信による通信ならびに新聞の検閲の宣言、租界の自治管理に対する容喙の主張、そこでの法と秩序を維持するために強制的介入、 恣意的な逮捕および授索による生命と財産の安全性に対する危険、ならびに租界全体を占領する脅威は、この金融、産業の大中心地の基礎そのものを突き崩し、その状態を不安定なものとしています。

 日本が北京に樹立した政権が行った最初の行為のひとつに、日本の製品や商品のために中国北部に対する中国の関税を75%から25%に引き下げたことが上げられます。これは他の国の通商には打撃となります。 このようにして、日本が中国に対する主要供給国となっている綿製品の関税率は、50%ないし60%引き下げられました。人造繊維に対する関税率は、これまた日本の産業の特別な関心事でありますが、75%引き下げられました。

このような独断的な行動は中国港湾税関の歴史ある整合性を混乱させ、中国の税制を破壊するのみならず、他の諸国の通商権益に深刻な打撃を与えるために明らかに意図されたものです。

 これは日本が門戸開放政策の原則を尊重するという意図の重ね重ねの表明によりこれまで意図していたことおよび現在意図していることを世界が理解する助けとなりましょう。

要するに、中国における第三国の権利および権益に関して極東における現状の深刻さは、等しく衝撃的な発言を行う日本のその他の政治家と並んで、 末次海軍大将がある日本の新聞とのインタビューに応じた際の記事を引用することによるほど、的確に感じとられるものはありません。

このインタビューでは、事実上、日本の真の目的は、一般的な諸勢力の配置、またはことに英国との戦争の危険を冒しても、日本の覇権をアジアにおいて確立することにあると規定しています。

いつものごとく、東京の外務省のスポークスマンは、戦場における言語による意志疎通の困難性を指摘したり、そのように表明された意見は個人的性質のものだと陳弁したりして、融和的な説明を試みています。

しかしながら、末次海軍大将は現在海軍大臣であり、「新十字軍タイプ」の極端な国粋主義者であるといわれていますし、彼の見解は日本の世論の影響力のある大きな部分を代表していているという事実、 また上海地域への日本派遣軍総司令官、松井大将がたった3日前に、昨年1月31日付けのタイムズ紙に報じられたとおり、同じような脅迫を行っているという事実は、その発言に特別の重みをもたせるに違いありません。(P91)
 
 日本による中国領土への侵入の継続、および日本政府が中国に対してもつ邪悪な意図にかんがみ、中国政府は、自己防衛および自己保全の政策を継続するほかありません。 日本の中国侵略軍が今日ではすでに百万人の規模に膨張していますが、中国国民の士気は衰えていません。(P91-P92)

中国領土の英雄的な防衛は今日では6方面で行われています。中国政府による1938年1月18日付けの声明のとおり、

「中国の平和への希求は変わることはないが、中国はいかなる国による主権およびその領土ならびに行政の一体性への侵害を耐え忍ぶことはできない。 それは中国の独立の本質的な属性であり、関係諸国が厳粛な条約により遵守すると約束したものである。どのような状況にあっても、中国政府は主権およびその領土ならびに行政の一体性を守り抜くため、最大の努力を傾ける。 平和回復のためのいかなる条件も、それらが上記の基本的原則と一致しないのならば、中国は決して受け入れることはできない。 中国政府は、日本軍の占領下の地域に設置される、かかる不法な組織の行為すべては、国内的にも対外的にも無効と看倣す」

 1937年10月6日の総会決議の採択以降のこの数か月間に発生した変化の上記のような概要からは、極東における状況がこれまでに増して悪化していることが判明します。 日本による中国の軍事占領の強化とその地域の拡大は、その支配征服という悪意ある政策を明らかに表しています。

 満州事変のときに、私は日本の意図を国際連盟でお話ししました。これは中国の征服、アジアの支配および最終的には世界の支配を目指したプログラムの概要を記載した田中上奏文に明らかになっています。

理事会の席で日本代表は当該文書の信憑性を躍起に否定した時に、圧倒的多数の方々はその信憑性に懐疑的でした。 しかし、帝国主義的計画の詳細を綿密に追ったここ数年における日本の行動は、当該文書の信憑性を疑問の余地なきものとしています。

 田中上奏文は、中国に対する日本の継続的侵略行為のみならず、日本軍が中国における第三国の外国公館、外国の財産、および民間人に加える用意周到な攻撃を理解するに必要な背景となっています。 また、日本の陸海軍による欧米人の故意の虐待の頻発を説明する材料ともなっています。彼らは欧米人を虐待し、その人格を傷つけることに無上の誇りを感じているように見えます。

 政策の実現手段としての国家による力の強化は、日本兵の暴力および無法の精神を野放しとし、その軍規を欠いた有様は、すでに述べたように世界の耳目を聳動させました。 それは諸外国政府による抗議の対象と繰り返しとなっています。それは侵略軍が支配する極東でどの程度無政府状態が支配しているかを示しています。

私が述べているのは事実のみであり、現代史において国際的侵略の例として現在極東で起きているものよりも極悪非道なケースはないと言っても、反駁される恐れはまったくありません。 ただし、これは、国際連盟規約に明確に包含されているケースです。この規約は、そのような侵略を扱う原則ばかりでなく、それを抑制するために適用するための機構をも定めています。(P92)

中国は、規約第10条、第11条および第17条に基づき連盟に提訴しました。連盟の忠実かつ献身的な加盟国として自国の領土の保全および政治的独立に対する外部からの侵略に対する保障を求める権利を十分に有します。

この3か条は、それだけで侵略国を抑制し、侵略の犠牲となった国を支援するための広い範囲の行動を認めています。 中国政府は、そのため、この義務を遂行するために必要な措置をとることを理事会に対し要請します。


 1937年9月28日付けの総会決議は、日本軍の航空機による中国の無防備都市の爆撃を非難していますが、その残虐行為の継続を阻止するにいたらず、また1937年10月6日付けの総会決議も、 連盟による道徳的支援を中国に保障し、加盟国の個別の支援を約束するものでしたが、日本の侵略を停止または抑制するには不十分であることが判明しました。

極東における平和の回復をもたらす手段として連盟の示唆により招集されたブリュッセルにおける9か国会議も、効果的な行動を起こせないことが分かりました。 国際平和と正義の守護者として、国際連盟は規約によるその義務を放棄することはできません。

国際連盟の将来に関しかくも多大な疑問と不信がある現在、理事会が侵略国にその行為を思いとどまらせ犠牲となった国を援助するための、 連盟に対する信頼を回復しその権威を取り戻すような効果的な措置をとることが義務でもあり機会でもあることを、中国政府は心から信じます。

 極東における破廉恥な侵略に対処するにあたり、断固とした建設的な政策を採用することは、世界の平和愛好国家の何億人という人々の承認と支持を受けるでしょう。

極東における侵略軍の行為を思いとどまらせる目的で経済措置を適用することを連盟に求めて、各国政府に対して繰り返される人々の意思表示および訴え、 日本製商品の世界的なボイコットを組織し促進すること、これらはみな世界の世論が正義と平和のために規約の条項の適用を求めていることを示すのに資するものです。

侵略を抑止しその犠牲となった国を助ける連盟による積極的行動を求める人々の要求の盛り上がりは、平和の大義のためにまったく無視することはできません。 なぜならば、世論の支援は、連盟の強さの確かな源泉のひとつであるからです。

 世界のいたる所の不安定な状況にかんがみ、本件について連盟が効果的な措置を取る必要性は、まさにそれだけに喫緊であります。極東における紛争は、その性格上また影響上、真に世界的な重要性をもちます。

それはアジアにおける歴史ある国家である加盟国の領土保全や独立性に関係するばかりでなく、欧州の平和の要因にも大きく関係します。 先週、フランスの外務大臣が理事会で明確に表明したように、極東における現在の紛争は、スペイン内乱が長引いていることとまったく無関係であるわけではありません。(P93)

ここ数か月における国際情勢の変化のため、欧米における法と秩序が、逆にアジアにおける無秩序と暴力の支配により少なからず危殆に瀕していることが明らかになっています。 日本の対中侵略が野放しに放置されているかぎり、欧州の平和も危機に瀕し、欧州全体の和解も実現が難しくなります。(P93-P94)

他方、国際連盟の効果的な対処により、外部の平和愛好諸国の協力により、また、国際法と条約、特に9か国条約の義務に従い、中日紛争の早期かつ公正な解決を図ることは、欧州の安定と和解に大きく貢献し、 いずこにおいても法と秩序の力の勝利への道を切り開くものとなりましょう。


M.Qurvedo(エクアドル) わが国政府の指示に従い、私は決議案に賛成いたします。 なぜならば、私は、決議案の最終パラグラフの解釈は、国家の連合としての国際連盟の責任に関するかぎり次のようなものであるという理事国間の昨日の朝の意見交換から推定するからです。

連盟に代わって何らかの措置をとる前に、または連盟が(そして、連盟とともに加盟国としてのわが国も、と付け加えさせて頂きますが、) この選択に関する何ごとかについて責任をとる前に、紛争の公平な解決に貢献可能だと考えられ得る手段を適用し、または適用した結果、問題は不可避的にまず理事会の討議に付されます。 しかも自らの責任のみを履行する個別の国家の行動の自由を制約することなく、です。

 私は、この宣言を行うことを切望していますが、それはわが国の政府が連盟の非加盟国または連盟からの脱退を宣言した国との協力を歓迎しないからではありません。 むしろ、わが国の政府は、そういった国々、ことに全ての米州諸国との、心からの関係を望み、また維持し続けることを望んでいるからです。

そうではなく、[宣言を行うことを切望する]理由は、連盟自身の責任を果たす決定は、連盟を構成する諸機関が承認するまで、とることはできないからです。

現在の状況において規約全体を適用可能とは看倣さないと発表した国もあり、また他方、自らの責任を自ら解釈するつもりであると表明した国もありますが、私はこれに関してとかく批判するつもりはないのですが、 このような条件には、状況により特別の重要性が加わります。

それゆえ、自らの義務の場合にその他の加盟国が行うと同じ方法で、他国も連盟加盟国として自らに課せられたある種の義務を考慮することが義務付けられているのだと考えられる、そういう可能性を考慮に入れることが賢明であろうと思われます。

 以上をすべて考慮に入れれば、もしも最終パラグラフが多少とも連盟の権限の特定の国家への委譲に等しかったとすれば、それらの国家にわが国が絶大かつ誠実な信頼を寄せているとしても、わが国政府は決議に賛成票を投ずることはできなかったでしょう。

なぜならば、この場合には決議案は、エクアドルのような非常任理事国で極東に特別の関心をもたない、したがって自らの責任の大きさと性格を事件の段階ごとに推定するには困難な立場にある国々にとっては、重大な結果をもたらしかねなかったからです。(P94)


M.Komarnicki(ポーランド) 私どもはあるグループの諸国が準備し、交渉した決議案を眼前にしています。(P94-P95)

国際協力の集団的機関としての理事会の役割を大きく制限する効果をもつこの文言の作成において採用した手続きに不当に安住せず、また一方では日中紛争の実質を放置することなしに、わが国政府の一般的政策に従って連盟外でとられた行動(一か国がやったか数か国でやったかは別として)に対する連盟の支持を前もって与えるような決議に与するわけには行かないと私は申し上げたいのです。

わが国政府が反対する理由を―この反対は、専らこの深刻な紛争に関連し、その実質とはまったく関係ないものですが―さらにわかりやすく述べるために、私は1937年10月5日の前回の連盟総会会議で私が行った宣言に言及したいのです。

そのとき私は現在の決議案が言及している決議の表決で棄権しました。

 さらに私は、極東における平和の回復に向かって行っているすべての努力にわが国政府が最大の同情をもって従うことを述べたいのです。

 以上に申し上げた理由により、私は表決を棄権することを提案します。


M.Garcia Calderon(ペルー) 理事国間の昨日朝の意見交換では、わが国がわれわれすべてが憂慮している深刻な中国問題で棄権する理由を述べることが私の義務でした。ことに太平洋岸に現在面しているペルーではそうなのです。わが国の態度の理由は、決議案を検討するにはあまりにも時間が少なく、ことに、決議案を作成した国が、決議案の作成にあたり他国の日常的な参加もなく、日々の意見の交換も行わなかったという事実にあります。

参加や意見交換は、決議の正確な範囲を理解するための欠かせない前提条件です。

 英国およびフランスの代表は、この状況下で決議案の作成に必然的に伴う困難を説明するにあたっては十分丁寧でした。この機会を利用して、それらの説明に感謝したいと思います。

 この質問は主として大国の利害に関係するということを認識しつつ、私は私が言及した手続き上の理由により、棄権する意思を表明いたします。


Viscount Cranborne(イギリス) 理事会に提出される決議に関しては、英国政府がそれを支持することをごく簡単に表明いたします。皆が心にもっている目標、すなわち極東における現在の悲劇的な紛争の公正で早期の解決に貢献することが判明することを英国政府は心から望むものであります。

 私の同僚何人かが今朝観察したところをみると、私が立場を明らかにすれば助けとなるでしょう。なぜなら、私はこの機会に採択された手続きに関してそう考えるからです。(P95)

 通常の手続きに沿うと、報告者がその同僚と協議した後に理事会による討議のために報告または決議を作成することになります。 この特別な事案では、報告者がいなくて、中国代表団は英国代表団およびその他いくつかの代表団に接触し、理事会に提出する可能な決議案を作成するためにとるべき手続きの方法に関してそれらの代表団と協議いたしました。(P96-P97)

そのためには非公式かつ予備的な討議があるだろうという示唆がありました。この非公式な討議は、他の理事国に伝えることのできるところに到達すると直ちに伝えられ、決議案を他理事国が検討するため呈示いたしました。

 いささか異常な手続きでありますが、異常事態であるため、正当化し得ると私は考えます。その唯一の目的は理事会が機能しやすくすることにありました。 他理事国が知ることもなく助けることのない状態でできあがった決議案に急いで了解をとるために、理事会に圧力をかける意図は毛頭なかったことを私は強調したいと思います。

英国代表団は、自らは、他国代表団が決議を検討しそれについて検討した決定に至るに必要なかぎり、理事会の現在の会期を延長することには異議がないと、ずっと明確にいたしました。


M.de Tessan(フランス) 採択した作業方法(あえて手続きとは申しませんが)に関して行った考察に関連して英国代表が行った説明に私も同意いたします。

 決議案の実際の文言については、フランス政府の考えや憂慮を誠実に反映して、弾力的なものとなっています。文言は私の側からは特にコメントを申し上げることがないようです。


M.stein(ソ連) 私も理事会が行った作業方法に関しては、Lor Cranborneの説明に与するものであります。決議案に関しては賛成票を投じます。


M.Wellington Koo(中華民国) 理事会での決議に関しては、私は、わが国政府の名において、極東のきわめて深刻な情勢が理事会による具体的かつ精力的な措置の採択を求めていると申し上げたいのです。 理事会での決議は、昨年10月に総会決議を引き出した同情的な精神のさらなる証拠とするには不十分である、と私は考えます。

しかしながら、私はわが国政府を代表してこれを受け入れ、総会決議の文言に入れるようこれまでに増して大いなる努力を払わなくてはならず、また提案された審査は精力的かつ迅速に行わなければならないと、 固く信じています。

私は日本の攻撃をさらに効果的に抑制し、英雄的な抵抗を続ける中国を支援するために、規約に基づく積極的な措置を採用することを連盟に求めるわが国政府の権利を留保いたします。 さらに、私の決議案受け入れは、規約第10条、第11条および第17条を援用した中国政府の訴えを理事会が審議し続けるという了解を前提としていることを私は申し上げておきます。(P96)

 これまで言及された作業方法の問題に関して、私は英国代表の言明に与します。それはなぜある会話が始まったかを説明している、と私は考えます。 中国代表団は予備的意見の交換のためにある理事国に接触しましたが、これは理事会での討議を円滑化するためです。(P96-P97)

会話が進展するに従い、その結果を理事会に提出して理事会に適正に議論してもらうために仮草案の形式で作成することが示唆されました。 会話を示唆するにあたり、または結果を書面による仮ステートメントの作成に参加するにあたり、すでに取り決めたもので他の理事国に説明する意図は決してありませんでした。

中国政府が理事会に訴えたという事実は、理事国すべてに十分討議していただきたかったということを示しています。ある理事国の感想を聞いた後、この作業方法の問題がすべてクリアされたことを喜んでいました。 わが代表団側には (また本件に関しては、ただいま聞いた観察によって完全に明らかとなつたようにいかなる代表団側にも) 理事会によるこの間題の検討または討議に十分な時間を与えないという意図は毛頭ありませんでした。


議長 私は、決議案が2か国の棄権を除き、理事会の承認を得たことに留意いたします。これで私は決議が採択されたことを宣言します。

決議案は採択された。



[4015]

 セッションの終了


議長 これをもちまして国際連盟理事会の第100回セッションの閉会を宣言します。(P97)





<参考 アジア歴史資料センター レファレンスコード B04013944900 >

条約局第三課『第百回理事会に於ける日支問題討議の経緯』昭和13年2月 アジア歴史資料センター:B04013944900 2画像目

第百回理事会に於ける日支問題討議の経緯

(中略)

四、決議の採択

理事会は前記非公開会議に引続き一時よりの公開会議に於て顧維鈞の演説後波蘭、祕露の棄権を除く全会一致を以て支那問題に関する決議を採択したり。

(一)劈頭顧維鈞は日本の侵略の事実日本軍の暴行、第三国の権益侵害等を述べ連盟の行動を要求する趣旨の演説を為せり。(註)

(註)顧維鈞の演説の要旨左の如し。

「昨年十月の連盟総会決議以後も日本の侵略は続行強化され 北は済南、中央は上海、南京、杭州等何れも占領され 已むなく首都は重慶へ移さるるに至り 又日本海軍は南支の小島嶼を占領し 空軍は無防備都市の空爆を続行しつつあり。

嘗て厳格なる訓練を誇りたりし日本兵士の其の占領地帯に於ける暴虐野蛮なる行動は言語に絶し 其の幾多の事例は中立国の目撃者より報告され外国新聞に報道せられたる通なり。

と述べ、日本兵の掠奪、暴行及姦淫に関する昨年十二月二十日の「タイムス」及一月二十八日の「デイリー・テレグラフ」を引用し

日本の軍閥は其の占領地に於て領土的野心なしと唱へつつ予ての計画に従ひ傀儡たる地方政権を組織し遂に所謂支那共和国仮政府を作り上ぐるに至れるが 之と関連し寺内大将が十二月十七日発表したる「支那国民は日本軍に服従すべし」との布告は注目に値す。

右と同様に驚くべきは「爾後国民政府を相手とせず」との一月十六日の日本政府の声明にして右は支那の独立と主権を破壊せんとする日本の邪悪なる意図の明白なる証左なり、日本の侵入は支那人に対する損失以外に諸外国竝に在支外人の正当なる権益に重大な影響を与へたり。

(以下略)

 



<参考 「ドイツ外交官の見た南京事件」より>

『国際連盟理事会(ジュネーブ)決議文』

1938年2月1日付

文書番号C・六九/一九三八/七

 内容 − 中国政府の提訴にもとづく決議案

 理事会は、
 極東情勢を考慮し、
 前回の理事会以降も、中国での紛争が継続し、さらに激化している事実を遺憾の意とともに銘記し、
 中国国民政府が中国の政治的経済的再建に注いだ努力と成果にかんがみて、いっそうの事態の悪化を憂慮し、
 国際連盟総会が一九三七年一〇月六日の決議によって、中国にたいする道義的支援を表明し、あわせて、連盟加盟国は中国の抵抗力を弱体化させ、現下の紛争における中国の困難を助長しかねないいかなる行動も慎み、 それぞれが中国支援拡大の可能性を検討すべきであると勧告したことを想起し、
 国際連盟加盟国にたいして上記の決議に最大限の注意を喚起し、
 東アジア紛争に特別な利害を有する理事会加盟国が、同様の利害関係国との協議を通じて、極東紛争の公正な解決に寄与するため、今後のあらゆる手段の可能性を検討するいかなる機会も逸さないことを確信する。





 『国際連盟理事会第六会議議事録』

1938年2月1日付

  内容 − 中国政府の声明
                                                   
 議長による決議案(C・六九/一九三八/七)の提示に続き、顧維鈞氏(1)の演説―

 ただいま読み上げられた決議案を拝聴しました。 本決議案に関する中国政府の見解を表明する前に、最近数か月間に起こった出来事を述べ、現下で連盟理事会が何をなし得るか、我が国の切実な要求は何か、についての中国政府の見解を申し述べたいと思います。

 第一八回連盟総会が、咋年一〇月六日、日本の中国侵攻にたいする中国政府の抗議に関連して決議を採択した後も、日本軍は中国領土への無慈悲な侵略を続け、これをいっそう激化させています。

 華北の日本軍は黄河を渡り、聖なる山東省の都であり、孔子の生地でもある済南を占領しました。 華中では一一月、中国抵抗軍が、陸海空が一体となった日本軍の激烈な攻撃にたいして三か月に及ぶ勇敢な抵抗をおこなったすえ、上海地方からの撤退を余儀なくされました。

 南京に脅威が迫ったため、中国政府は、首都を海岸から一千マイル離れた重慶に移すことを強いられました。 日本軍が漢口と南京にたいして加えた執拗な攻撃の結果、三月には、この二つの重要な都市と最も肥沃で人口の多い長江流域が日本軍占領下に入りました。

 日本海軍は、福建省および広東省沿岸にある多くの中国の島嶼を制圧し、広東と華南にたいする侵略の試みを繰り返しています。

 日本軍航空隊は、国際社会の非難の合唱を無視して無防備な都市にたいして無差別爆撃を続け、中国民間人の大量殺戮をおこなっています。 広範囲にわたる再三の空襲が、西北の甘肅省から南西の広西省まで一七をこえる省の人口密集地帯に加えられ、すさまじい犠牲者を出していますが、その大半は女性と子どもであります。

 さらに、高い軍紀を誇りにしてきた日本兵が占領地で繰り広げる残虐で野蛮な行為は、戦火に打ちひしがれた民衆の艱難辛苦をさらにいっそう増大させ、礼節と人道に衝撃を与えています。 あまりにも多くの事件が中立国の目撃者によって報告され、外国の新聞で報道されているので、ここでいちいち証拠をあげるには及ばないでしょう。

 ただ、その一端を物語るものとして、日本軍の南京占領に続いて起こった恐怖の光景にかんする『ニューヨーク・タイムズ』紙特派員の記事を紹介すれば十分でしょう。 このリポートは一二月二〇日付の『ロンドン・タイムズ』紙に掲載されたものであります。特派員は簡潔な言葉で綴っています。 「大がかりな略奪、強姦される女性、市民の殺害、住居から追い立てられる中国人、戦争捕虜の大量処刑、連行される壮健な男たち」。

 日本兵が南京と漢ロ(「ゆう」注 「杭州」の翻訳ミス)でおこなった残虐行為についての信頼できるもうひとつの記録は、 米国人の教授と外交使節団による報告と手紙にもとづくもので、一九三八年頁一月二十八日の『デイリー・テレグラフ』紙と『モーニング・ポスト』紙に掲載されでいます。 南京で日本兵によって虐殺された中国人市民の数は二万人と見積もられ、その一方で、若い少女を含む何千人もの女性が辱めを受けました。

 金陵大学緊急委員会の米国人議長は一九三七年一二月一四日、日本大使館に書簡を送り、「私たちはあなた方にたいして、日本軍と日本帝国の名誉のために、 そしてあなた方自身の妻、娘、姉妹のために、あなた方の兵士から南京市民の家族を守っていただけるよう強く要請します」と書きました。 しかし、「この声明にもかかわらず、残虐行為は野放しで続いた」と特派員は書き記しています。

〔以下、略〕
                                                       
(1) 顧維鈞は中国を代表する外交官、欧名はWellington Koo。 コロンビア大学で国際法・外交博士号を取得、一九一五年二七歳の若さで駐米公使に就任、一九一九年パリ講和会議では、中国全権代表として活躍した。 国民政府にかわっても外交官を継続、日中戦争時は駐仏大使をつとめながら、国際連盟において活躍、日本の中国侵略を阻止するための国際批判と国際援助を引き出すために奔走した。 一九三七年一一月日本の中国侵略を制裁する目的で開催されたブリュッセル九ヵ国会議で中国全権代表をつとめた。 第二次大戦後の国際連合の創設にもかかわり、駐米大使兼国連代表団団長を長くつとめ、一九六四年から二年間、ハーグ国際司法裁判所次長をつとめた。

(『ドイツ外交官が見た南京事件』P136〜P139)

*「ゆう」注 〔以下、略〕は原文通り。




赤松祐之『昭和十三年の国際情勢』より

(一)第百回理事会

第百回理事会は一月十七日開会の予定であつたが、仏国政府の都合に依り、一月二十六日から開会せられ、議長にはイラン国代表が之に当つた。

支那代表顧維鈞は、秘密四国会談に於て規約第十六条の制裁実行を要求し、蘇連代表の支持を得たが、英仏側が制裁の実行は事実上困難な旨を説き、これに反対したので、結局左記の如き漠然たる決議を以て満足することになつた。

右の交渉は理事会とは別に英、仏、蘇、支の四国会談に於て行はれたものであつたが、四国会談作成の決議案が二月一日の理事会に上提されるゝや、ポーランド代表は理事会外にて少数大国のみが勝手に決定した結果を理事会に押付けんが如き方法には同意し難いと述べ、棄権の意を明らかにした。(P125)

ペルー及びエクアドル代表もポーランド同様の異議を唱へ一波乱を起したが、英、仏、蘇各代表は釈明慰撫に努め、結局二月二日の理事会に於て、ポーランド及びペルーの棄権を除き全会一致で、原案通り可決された。(P126-P127)

最後に顧維鈞は、決議案には不満足であるが、規約第十、十一及び十七条に基く支那政府の提訴が依然理事会に繋続するものとすとの了解の下に之を受諾する旨を述べた。

決議案の要旨は左の通り。(略)

(P126)
 



(2009.6.27)


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