第二章 法
昭和二十三年十一月四日朗読
(ハ)起訴状 ( 抄 )
【前略】訴因第四十五ないし第五十は述べ方があいまいである。これらの訴因は、異った場所で、示された日時に行われた殺人を訴追している。
これらの殺人は、日本軍隊に対して、これらの場所を攻撃し、住民を殺害することを不法に命令し、行わせ、許可し、それによって、一般人と武装解除された軍人を不法に殺害することによって行われたものとされている。
これらの訴因の言葉からは不法な殺害という主張の基礎を、攻撃の不法性に置こうとするのか、その後における戦争法規の違反に置こうとするのか、またはその両方に置こうとするのか、あまり明瞭ではない。
その意図が前者にあるのならば、この類の初めの方の諸訴因の場合と事情は同じである。もし戦争法規の違反に基礎を置くものとすれば、
訴因第五十四と第五十五の起訴事実と重複している。
これらの理由だけで、そして、このような事情のもとにおいて殺人の起訴事実の妥当性に関してどのような意見も表明する必要がないと認めて、われわれは、
訴因第三十九ないし第四十三と訴因第四十五ないし第五十二とについて、判定を与える必要がないと決定した。
(『南京大残虐事件資料集 第1巻』P395)
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