「南京」以前ー「出版警察報」より |
「出版警察報」は、内務省警保局(当時)が、「検閲」によって「記事差し止め」「発禁」などの処分を行った報告をまとめた、日本側の記録です。 今日では、当時の報告者の意図とは裏腹に、皮肉なことに、「当時はこのようなメディアにこのような記事が掲載されていた」ことを知る、貴重な資料になっています。例えば笠原十九司氏は、「出版警察報」の記録をもとに、当時のアメリカにおける「南京事件」関連記事を発掘しています。 ここでは、「南京事件」以前、華北・上海戦などの時期に、中国のメディアが日本軍の行動をどのように記録していたか、という視点から、記事を集めてみました。今となっては個別の事件の真実性・正確性の検証は極めて困難ですが、「南京事件」以前にも、中国側がこのような認識を持っていた、ということを知る上で、貴重な資料であるといえるでしょう。 当時の中国政府の「南京事件」報道への反応が、今日の目から見るとやや鈍かったことをもって、「事件」の存在まで否定しようとする人もいますが、これを見ると、当時の感覚では、「南京事件」報道も、「事件」の規模が知られるまでは、「数ある日本軍の『暴虐』事件がまたひとつ増えた」程度に受け止められていたであろうことは、容易に想像がつきます。 *報告者がつけたコメントは、斜字で表示しました。 **読みやすくするために、カタカナはひらがなに改め、また旧字は新字に改めてあります。 ***日付はすべて、1937年(昭和12年)のものです。 ****なおここでは「当時の中国政府の「南京事件」報道への反応がやや鈍かった」という表現を行いましたが、これは「中国政府が南京事件を知らなかった」ことを意味するものではありません。 当時、中国側メディアでも「南京事件」についての大量の報道が行われており(『南京事件資料集2 中国関係資料編』参照)、国民党政府・中国共産党とも「事件」に対して一定の認識を示していました 。コンテンツ「中国は知らなかったか?」および「中国共産党は知らなかったか」をご参照ください。
なお、報告者のコメントには、しばしば「曲折」「捏造」など、記事の事実性を否定する言葉が出てきます。 先にも述べた通り、今日では個別事件の検証は極めて困難であり、記事に誤認・誇張が含まれている可能性もないとはいえませんが、このコメントについていえば、報告者自身が検証したはずもなく、単なる「枕詞」と見るのが妥当でしょう。 (2004.3.14記)
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